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東京高等裁判所 昭和44年(ネ)2014号 判決 1975年2月27日

控訴人

伊知地不二

右訴訟代理人

野村幸由

被控訴人

岡本太一

右訴訟代理人

岩渕秀道

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

(※控訴人<第一審被告>代理人は、第二審において、新たな抗弁として、「(四)、仮に本件請負契約が有効であるとしても、その契約書(甲第一号証)の第四五条記載のとおり、同契約に定めた事項につき紛争が生じたときは神奈川県建築工業紛争審査会の仲裁に付し、その判断に服する旨の仲裁契約がなされていたものであるから、本件訴訟は不適法として却下されるべきである。」と陳述し、被控訴人<第一審原告>代理人は、控訴人の前記(四)の主張は、「時機に遅れた攻撃防禦の方法であるから、民事訴訟法第一三九条の規定により却下されるべきである。仮に然らずとしても、控訴人の右主張はすべてこれを争う。」と陳述した)。

理由

《前略》

(三) 控訴人は本件請負契約上の紛争については仲裁契約がなされているから本訴は不適法であると主張するところ、この主張も当審における控訴人の昭和四六年三月二九日付準備書面において始めてなされたもので、甚しく時機に遅れたものというべきであるが、右抗弁の提出は、いまだもつて本件訴訟の完結の遅延の原因となるものとは認めることができない。しかしながら、右仲裁契約は控訴人と被控訴人間において昭和四一年四月五日付で作成された建築工事請負契約書(甲第一号証)に添付された工事請負契約約款第四五条に明記されているところであるから、何ら特段の事情につき主張立証のない本件においては、控訴人は、当初から右仲裁契約の存在を知つていたものと認むべきところ、原審においては仲裁契約存在の抗弁を提出することなく、本案につき弁論をなし、当審においても数次に亘る弁論期日を重ねた後、始めて前記準備書面によつて右抗弁を主張するに至つたものであつて、右訴訟進行の経過にかんがみれば、控訴人は民事訴訟法第一四一条の規定の趣旨に照し、右抗弁提出の権利を失つたものと解するのが相当である。《後略》

(平賀健太 安達昌彦 後藤文彦)

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